夜の運転が怖い人へ|ペーパードライバーが覚えておきたい夜間運転8つのコツ
講習を受けたお客様から、「夜の運転がまだ怖いです。コツはありますか?」というご質問をいただきました。
夜の運転が難しいのは、気持ちの問題だけではありません。昼間と比べて、見える距離が短くなり、歩行者や自転車に気づくのが遅れやすくなるからです。逆に言えば、ライトの使い方と速度の決め方を知っておくだけで、できることがはっきりします。
この記事では、夜間に実際に使えるコツを8つにまとめました。ライトや交通ルールに関わる部分は、警察庁・交通の方法に関する教則・国土交通省の基準など公的資料で確認した内容です。書いているのは、指定自動車教習所に15年間勤務し、元技能検定員として合否を判定してきた講師です。
- 夕方は「暗い」と感じる前に、早めにライトをつけます
- 周りに車がいない暗い道では上向き。対向車・前の車・自転車が見えたら、こまめに下向きへ切り替えます
- 下向きライトで確認できるのは約40m先まで。その範囲で止まれる速度に落とします
- 対向車が眩しいときは、視線をやや左前方へ移します
- 歩行者・自転車は見つけるのが遅れやすいので、横断歩道以外の場所や右側にも意識を向けます
- 夜の運転が昼と違う3つの点
- 夜間運転8つのコツ
- 夜の練習の始め方(K Steering Labからのアドバイス)
夜の運転は、昼と何が違うのか
夜の運転で変わるのは、主に次の3つです。
- 見える範囲が短くなる:ライトが届く範囲の外は、ほとんど見えません
- 歩行者や自転車に気づくのが遅れやすい:暗い色の服や、ライトのついていない自転車は、近づくまで分かりにくくなります
- 対向車のライトが眩しい:眩しさで、一瞬まわりが見えにくくなることがあります
このあと紹介する8つのコツは、この3つにひとつずつ対応しています。
コツ1 夕方は「暗い」と感じる前にライトをつける
ライトは、自分が前を見るためだけのものではありません。まわりの車や歩行者に、自分の車がいることを知らせる役割もあります。
交通の方法に関する教則(国家公安委員会の告示)には、「薄暮時には事故が多く発生しますので、早めにライトを点灯し、自分の車の存在を知らせるように」と書かれています。警察庁は、日の入り時刻の前後1時間を「薄暮時間帯」として、前照灯の早めの点灯を呼びかけています。
目安は、「まだ見えるから大丈夫」ではなく、「まわりから自分の車が見えているか」です。空が暗くなり始めたら、つけてしまいましょう。
コツ2 周りに車がいない暗い道では、上向き(ハイビーム)にする
交通の方法に関する教則には、「前照灯は、交通量の多い市街地などを通行しているときを除き、上向きにして、歩行者などを少しでも早く発見するように」と書かれています。
上向きと下向きでは、見える距離が大きく違います。
| ライト | 基準上、障害物を確認できる距離 |
|---|---|
| 上向き(走行用前照灯・ハイビーム) | 夜間に前方100m |
| 下向き(すれ違い用前照灯・ロービーム) | 夜間に前方40m |
出典:道路運送車両の保安基準の細目を定める告示 第198条(国土交通省)。車検で求められる性能の基準です。実際の見え方は、車種やライトのレンズの状態、相手の服の色などによって変わります。
暗い郊外の道や、街灯の少ない道で、前にも向こう側にも車がいないときは、上向きにしたほうが歩行者を早く見つけられます。
コツ3 対向車・前の車・自転車が見えたら、こまめに下向きへ切り替える
上向きにしたままでよいわけではありません。教則では、「対向車と行き違うときや、ほかの車の直後を通行しているときは、前照灯を減光するか、下向きに切り替えなければなりません」とされています。道路交通法でも、他の車とすれ違うときなどに、他の交通を妨げるおそれがある場合はライトを操作するよう定められています。
下向きに切り替える場面を整理すると、次のとおりです。
- 対向車とすれ違うとき
- 前の車のすぐ後ろを走るとき
- 対向してくる自転車がいるとき
- 交通量の多い市街地を走るとき
つまり、「暗い道で車がいなければ上向き、車や自転車が見えたら下向き、明るい街中は下向き」です。都内の幹線道路や繁華街では、下向きで走る時間のほうが長くなります。ハイビームは「つけっぱなし」ではなく、状況に合わせてこまめに切り替えるものと考えてください。
自動で切り替わるライトにも、任せきりにしない
最近は、上向きと下向きを自動で切り替える機能(オートハイビームなど)がついた車もあります。便利な機能ですが、JAFの実験では、歩行者や自転車に対しては自動で下向きに切り替わらなかったという結果が出ています。また、対向車とすれ違ったあと、上向きに戻るまでに少し時間がかかります。
人や自転車が見えたら、自分でレバーを操作して下向きにしてください。どんな場面で切り替わらないことがあるかは、車によって違います。お使いの車の取扱説明書で確認しておくと安心です。
コツ4 ライトが届く範囲の中で止まれる速度にする
夜にいちばん大切なのは、速度です。
新潟県警察の交通安全ページでは、時速60kmで急ブレーキをかけた場合、止まるまでに約44m進むという例が示されています。下向きライトで確認できる距離は約40mです。つまり、時速60kmで走っていると、下向きライトの届く先に人が見えてブレーキを踏んでも、止まりきれない場合があるということです。
同じページでは、時速40kmなら止まるまでの距離は約22mとされています。
| 速度 | 止まるまでの距離(例) |
|---|---|
| 時速60km | 約44m |
| 時速40km | 約22m |
出典:新潟県警察「夜間の交通事故防止(ライトのこまめな切り替え)」。乾燥した舗装路面で摩擦係数0.7、反応時間1秒の場合の例です。雨の日や路面の状態、タイヤの状態などによって長くなります。
夜は、「見えている範囲の中で止まれるか」を基準に速度を決めます。警察庁も、夜間は速度感覚が鈍りやすいとして、昼間より速度を落とすよう呼びかけています。制限速度は「出してよい上限」です。一般道では、夜は見える範囲に合わせて、それより遅く走って構いません。
夜の運転だけまだ不安な方も、LINEでご相談ください
昼間は運転できるようになってきたけれど、夜の運転だけまだ不安という方もご相談ください。普段走る道や、不安を感じる場面に合わせて、夜間の運転練習についてもご相談いただけます。
LINEで相談する(無料)コツ5 対向車が眩しいときは、視線をやや左前方へ移す
対向車のライトをまっすぐ見ると、目がくらんで一瞬まわりが見えにくくなります。教則には、「対向車のライトがまぶしいときは、視点をやや左前方に移して、目がくらまないように」と書かれています。
自分の車線の左側、左の白線のあたりに目線を逃がすイメージです。ただし、前を見るのをやめるわけではありません。眩しさを避けるために視線の中心を少しずらすだけです。
すれ違う前後は、道路の真ん中あたりに人がいないか意識する
自分の車のライトと対向車のライトが重なるあたりでは、道路の中央付近にいる歩行者が、一瞬見えなくなることがあります。「蒸発現象」と呼ばれるもので、警察も注意を呼びかけています。対向車とすれ違う前後は速度を控えめにし、道路の真ん中あたりに人がいないかを意識してください。
コツ6 夜は歩行者・自転車の発見が遅れやすい。横断歩道以外にも注意する
警察庁が令和3年から令和7年の5年間の交通死亡事故を分析した結果によると、薄暮時間帯(日の入り前後1時間)には、自動車と歩行者の事故が最も多く発生しています。そのうち横断中の事故が約8割で、横断した場所は横断歩道以外が約7割でした。
夜は、「人は横断歩道で渡る」と決めつけずに走ることが大切です。
- 右側にも意識を向ける:下向きライトは、対向車を眩しくさせないように、右側を照らす範囲が狭くなっています。そのため、右側から道路を渡ってくる歩行者は見つけにくくなります。左側だけでなく、右側にも意識を向けてください
- 暗い服・ライトのない自転車は、近づくまで見えないと考える:見えていないだけで、そこにいるかもしれない、という前提で走ります
- 横断歩道の手前では、人がいないとはっきり分かるまで、いる前提で近づく:横断歩道の手前では、渡ろうとしている人がいないことが明らかな場合を除き、止まれる速度で進むことが道路交通法で定められています。夜はこの「明らか」と言える場面が少なくなります
- 止まっている車の陰から人が出てくるかもしれない:横断歩道の手前に止まっている車がある場合や、路肩に駐車している車の横を通るときは、その陰にも注意します
コツ7 雨の夜は、晴れの夜よりもう一段ゆっくり走る
雨の夜は、さらに見えにくくなります。教則には、「特に雨などでアスフアルトの路面がぬれているときは、歩行者が見えにくくなります」と書かれています。濡れた路面がライトを反射するため、先ほどの蒸発現象も起きやすくなります。
そのうえ、雨の日は路面が滑りやすく、止まるまでの距離も長くなります。雨の夜は、晴れた夜よりもう一段速度を落とすと覚えておいてください。
コツ8 出発前に、ガラスと車内を夜用に整える
夜は、少しの曇りや汚れでも見えにくさが増します。出発前に次のことを確認しておくと安心です。
- フロントガラスの内側と外側の汚れ・曇り:内側の汚れは見落としがちです。走行中に曇ったら、フロントガラスに風を送るボタン(デフロスター)を使います
- ワイパー:拭いたあとに筋が残る場合は、ゴムの劣化が考えられます
- 室内灯:教則には「室内灯は、バスのほかは、走行中につけないように」と書かれています。走り出す前に消えているか確認します
- 目の状態:教則には、明るさが急に変わると視力が一時的に大きく低下すること、夜は対向車のライトを直視しないことが書かれています。疲れているときは、夜の運転そのものを控えるのもひとつの判断です
まとめ
- 夕方は「暗い」と感じる前にライトをつける
- 周りに車がいない暗い道では上向きにする
- 対向車・前の車・自転車が見えたら、こまめに下向きへ切り替える。自動切り替えにも任せきりにしない
- 下向きライトで確認できるのは約40m先まで。その範囲で止まれる速度にする
- 対向車が眩しいときは、視線をやや左前方へ移す
- 歩行者・自転車は見つけるのが遅れやすい。横断歩道以外の場所や、右側にも意識を向ける
- 雨の夜は、晴れの夜よりもう一段ゆっくり走る
- 出発前に、ガラス・ワイパー・室内灯を確認する
夜の運転は、見える範囲が短くなる分、昼間よりも「早めに・ゆっくり・こまめに」が大切になります。一度に全部を覚えなくても大丈夫です。まずはライトの切り替えと速度の2つから意識してみてください。
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参考資料
- 警察庁「交通の方法に関する教則」
- 警察庁「ハイビームの上手な活用で夜間の歩行者事故防止」
- 警察庁「薄暮時間帯における交通事故防止」
- 国土交通省「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示」第198条
- 国土交通省「前照灯の自動点灯機能(オートライト)の義務付け」(2016年10月7日)
- 新潟県警察「夜間の交通事故防止(ライトのこまめな切り替え)」
- 群馬県警察「蒸発現象」
- 山口県警察「夜間の交通事故を防ぐために」/埼玉県警察「ハイビーム」(ロービームの照射範囲)
- JAF ユーザーテスト「オートハイビーム」
- 道路交通法 第38条・第52条